なんともやるせない話


朝から雨の予報が、昼過ぎになって降り始めた。庭の草とりができて、半日儲けた気分だ。草花を刈り取って冬状態の花壇に米ぬかを蒔いておくと雀や目白やヒヨドリなどの餌場になって毎日楽しんでいた。時々しか来なかったムクドリが味をしめて団体で来るようになった。これ以上増えてフン害に憤慨していてもしまらない話だ。そろそろ、春の草花を植えることにした。



最近毎日のように報道されるのが、住宅火災で老人が亡くなったニュースと子どもへの虐待のニュースだ。そんな折、入院中に読んだ雑誌の女性会社員の投稿記事にも、なんともやるせない気持ちにさせられた。


その会社員の女性、残業で帰宅するのが11時過ぎになってしまった。自宅まで30分ほどの距離をマイカーを走らせていた。 こんな時間なのに、前方に4〜5歳くらいの女の子がひとり歩いているのが見えた。 車を止めて話しかけようとすると反対側へ逃げた。 車をその場に留め、追いかけてやっと保護した。




女性は、女の子に家まで送るから、道はわかるかと訊ねると「わかる」とのことで送った。 家の近くまで来ると女の子は「もうここでいい!」とあわてたような、おびえたようなそぶりを見せた。これは何かあると察し、親の顔を見るまでは安心できず夜中にもかかわらずチャイムを押した。



出てきたのは確かにその子の母親だった。 母親は異常なほどに驚いていた。そしてとめどもなく涙をながした。実は、この子の両親は離婚してこの子は父親の元で暮らしているとのこと。なんとこの5歳の女の子は、母親に会いたい一心で深夜の道をひとりでお母さんのもとへと向かっていたのだ。父親に「お母さんに会いたい」とも言えず、父親やその家族が寝静まるのを待って会いに向かったのである。



投書した女性も指摘しているが、この投書では二つの考えさせらる点があった。そのひとつは、本当の親子でありながら、何でこんな小さな子がこれほど辛い思いをしなければならないのか。胸を締め付けられる思いである。     


もうひとつはいくら深夜とはいえ、何十台、いや何百台もの車が、その子の横を通り過ぎたはずである。あんな小さな子供が、夜中にひとりで歩いているのを見ても無関心でいられるとすれば、それは人間としてとても悲しいことだ。