映画「日本のいちばん長い日」


<きょうの一枚>
瀬戸市の街の中心部にある「瀬戸蔵ミュージアム」。4階まで吹き抜けの円形パティオ(中庭)につりさげられた風鈴で作った巨大な風鈴。見るからに涼しそうだ。


相変わらずの厳しい暑さ。きのうの午後、避暑を兼ねて久しぶりに映画館に行った。「8月ジャーナリズム」ならぬ「8月興行」とでも云おうか終戦記念日にタイミングを合わせた映画「日本のいちばん長い日」だ。昭和史研究の第一人者・半藤一利のノンフィクション小説を映画化したものだ。歴史の転換点のドキュメントであり、それを動かした人たちの心の葛藤を描いたドラマでもあって息をもつかせない2時間15分だった。



終戦間際の1945年8月14日から15日にかけてのポツダム宣言受諾をめぐり昭和天皇(元木雅弘)、鈴木貫太郎首相(山崎努)、阿南陸相役所広司)ら戦争終結に動いた要人たちの心の葛藤、その裏にあった本土決戦を望む陸軍将校たちによるクーデター事件の姿も追い、日本の歴史が変わった長い一日とその瞬間をサスペンスタッチで描いている。


なお、40数年前にも同題名で映画化されており、そのときは昭和天皇松本幸四郎)、鈴木首相(笠智衆)、阿南陸相三船敏郎)だったという。残念ながら見てないので、その時の岡本喜八監督と今回の原田眞人監督がどこに焦点をあてて描いているかの比較ができない。


少なくとも云えるのは、天皇の描き方だ。前回の公開されたときは昭和天皇はご存命中で、畏れ多くも松本幸四郎が顔を出すわけには行かない。後姿だけであったそうだ。今回は立憲君主制の中で自由がなく、まさに「耐え難きを耐え」て来られた昭和天皇がここで止めないと日本という国がなくなるという思いで聖断を下されるさまは苦悩を含めた”人間”としての昭和天皇が実にうまく描かれている。元木の演技がうまい。



現実に鈴木首相は昭和天皇侍従長、阿南陸相は侍従武官であったことから、この3人が戦争終結に動いた要人であることは史実であり、この映画もこの3人を中心に描かれている。中でも阿南陸相は本土決戦を主張する軍部でありながら、軍人としての誇りに背きながらも、昭和天皇を支え平和的解決を選んだ男の覚悟と悲哀を迫力ある演技で魅せる。「軍をなくして国を残した」阿南陸相の残したこの一言が印象的だ。


ポツダム宣言受諾から終戦玉音放送まで、中学の歴史の教科書だったらせいぜい5〜6行だろう。その行間にはこんなにも数々の史実とそれにまつわるドラマが詰まっている。それにしても、学校で近現代史を教える時間が余りにも少ない。そんなことまで痛感させられるこの映画。                         


1945年8月14日から15日の「日本のいちばん長い日」そこから今の日本は歩み始めたといっても過言でない。その8月15日を前にして歴史を見直してみる機会を得た人も多いだろう。