語りかけてくれる季節の花木


日中は雲が主役で、小雨がパラついたり、薄日がもれたりして不安定な天気。それでも、涼しい風が吹いて比較的凌ぎやすい週末金曜日だ。その涼しい風に重そうな頭を揺らしているのがヒマワリだ。夏の季語になっているように、ヒマワりは照りつける太陽の下で空に向かって大きな花を咲かせている姿が夏に一番よく似合う。


ウォーキングコース上に、この広大なヒマワり畑がある。10年くらい前に産廃処理場だった。白い大きな袋に入れられた医療系と思われる廃棄物で広大な敷地が埋め尽くされていた。それが、ヒマワリ畑に変身したのだ。除染効果があることが、流布されている。効果のほどは知らないが、このヒマワり畑の”お里”を知ってしまっているクマさんには、せっかくの真夏の風物詩への情緒的な感慨が全く沸いて来ない。



子どもの頃、秋になると黄色いゴルフボールくらいの大きさの木の実「キコク」を競って集めたものだ。いい香りの実だった。たくさん集めてどうするわけでもなし。ただ、ひとより多く集めたかっただけだ。この「キコク」がカラタチの実であると知ったのは、およそ60年後のつい3年前のことだ。


♪からたちの花が咲いたよ/白い白い花が咲いたよ  からたちのとげはいたいよ/青い青い針のとげだよ

北原白秋作詞、山田耕筰作曲の「からたちの花」のカラタチだ。子どものころ「キコク」といっていたのはカラタチを漢字で書くと「枳殻」だから納得だ。



このカラタチ、ウォーキングコース沿いの雑木林入り口で見つけた。おそらく、住宅開発される以前は農家の屋敷の一部だった場所と思われる。昔は鋭いトゲ(上の写真矢印部分)があるので泥棒除けの生垣にカラタチは使われたそうだ。余りにも鋭いトゲでだんだんすたれていったとか。


このカラタチ、4月頃に花が咲き、今頃実が青くなる。秋には熟して黄色くなる。種が多く、また酸味と苦味が強いため食用にならない。芳香がある。3年前の生涯学習講座「ふるさとの自然をたずねて」の際、廃墟となった農家の生垣で見た。その時は季節外れで花も実もなかった。きょうは、子どものとき以来のキコクとの再会だった。


ウォーキングで出会う草木たちは、クマさんの五感に季節の移ろいのシグナルを伝えてくれるだけでなく、さまざまな思い出までも語りかけてくれる。