車で10分の花見スポット


「近郊近在の花見」第三部は「車10分で行ける花見」だ。まずは、豊田線浄水駅の北にある愛知少年院の桜だ。普段は簡単に塀の中に入れない。といっても刑務所でないから塀ではなく高いフェンスだ。毎年4月の第一土曜に一般公開している。今年は今週の土曜7日だが、おそらく散ってしまっているだろう。カメラ・携帯電話の持ち込みご法度だ。


満開見頃のときを逃してはと先週の木曜29日に行った。塀の外の道路沿いにも歴史を感じさせる老木が何本もある。10年ほど前一般公開の日に中に入ったことがある。樹齢70年(当時)以上の桜が300本構内にあり、そのうち100本は豊田市の名木に指定されているという。桜の風情というよりは、上空が見渡せないほどに桜の花で覆われたジャングルの中にいるという感じだった。



この場所は旧海軍飛行場跡。昭和14年愛知航空機の性能試験飛行場として造成され、翌昭和15年に海軍に買収された。昭和20年4月から6月までに3回ここから神風特攻隊が出撃し63名が若い命を落としている。今、少年院になっている場所は海軍の官舎、兵舎の一部。桜はその当時植えられたもの。潔く散る桜とここから出撃した若い命がはかなくも散っていった事実に因縁めいたものを感じる。



トヨタ貞宝工場の東側にある豊田高専。ここも車で10分以内の距離だ。学校から西山公園まで一直線に400mの桜並木だ。今年で創立54周年のこの学校だから桜並木も54年と年季の入った老大木ばかりだ。とはいえ、樹齢70年以上と云われる愛知少年院の桜より若いはずなのにくたびれているように見える。車の通行量が多く、廃気ガスの影響を受けているだろう。


枝でなく幹に花を咲かせている木を何本も目にした。。3月31日でもう散り始めていた。ここの桜は豊田やみよしの市民が話のタネに「いっぺん桜のトンネルをくぐってみよう」と手軽な花見をしたい人にとっての「コンビニ桜スポット」と云ったところだろう。


「世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし」 (在原業平)彼の気持ちは桜が美しく咲いたら、散るのが心配になってしまう。この世の中に桜がまったくなければそんな心配もなく、のどかなものであるのだがといったところだろう。現代人は桜前線の追っかけをすれば、全国どこにでもコンビニがあるからそんな心配はご無用だ。それを憂うか、喜ぶかは、人それぞれの気持ち次第だ。