大津の保育園児惨事に思う

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大型連休の頃から始まる1ヶ月は、1年でもっとも心地よく過ごせるときだ。風薫り、緑も美しく、百花繚乱。隣家はまさにバラ屋敷と化しているのに対して、わが家は八朔の花が満開で芳香屋敷と化している。先週末からは夏日続きだ。

 

ラジオ深夜便の誕生日の花、11日はカキツバタ、12日はクレマチスと伝えていた。このカキツバタ、愛知県の県花であり、古典的園芸植物であるだけに、色々と思い出が蘇り、名前を聞くだけで懐かしさひとしおの感がある。最初の出会いは高校の古文の時間だっただろう。「伊勢物語」で在原業平(ありわらのなりひら)が現在の知立・八橋の無量寿寺で詠んだカキツバタの歌だ。

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○からころも ○きつつなれにし ○つましあれば ○はるばるきぬる ○たびをしぞおもふ

(何度も着て身になじんだ)唐衣のように、(長年なれ親しんだ)妻が(都に)いるので、(その妻を残したまま)はるばる来てしまった旅(のわびしさ)を、しみじみと思う。歌の五・七・五・七・七 の 区切り、〇印を追って行くとかきつばたになる。

 

名うてのプレイボーイ、スキャンダル男の在原業平が都に居辛くなって東国へ旅に出た。三河の国の八橋で弁当を広げて休んでいる時にふと目にしたカキツバタを折りこんで詠んだ歌なのだ。1300年もの歴史があるこの無量寿寺には何度も訪れたことがある。庭園には16の池があり、約3万本のカキツバタが植えられている。花札の5月の「杜若に八ツ橋」はここがモデルだそうだ。

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上のカキツバタは我が家のすぐ下、四つ池小公園の木道の脇で咲いてるものだ。小公園の池は水が干上がっているため生気がない。 カキツバタはアヤメ科アヤメ属。ウォーキング中、畑の片隅に咲くアヤメを見て、メンバーからこれアヤメ?カキツバタ?と聞かれる。その際、こう教える。花弁の元を見れば一発でわかる。アヤメは網目模様、カキツバタは白の目型模様。ハナショウブは黄色の目型模様。咲く場所でもわかる。アヤメは土、カキツバタは湿地。ハナショウブは土・湿地中間。咲く時期でもわかる。アヤメは5月上旬、カキツバタは中旬。ハナショウブは6月。

 

クレマチスは毎年今頃から6月下旬頃までわが家でも咲く。今年もけさ咲いているのを見た。花びらが6枚のものは「鉄線」、8枚のものは「風車」呼ばれるそうだ。クレマチスはこのふたつの総称。「鉄線」はつるが細くて丈夫で針金のようであることが由来。きんぽうげ科センニンソウ属。

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先週のビッグニュースといえば、大津市で保育園児らが死傷した惨事だ。高度成長期のころ、1970年代には交通事故死者は1万5千人を超した年があった。車は「走る凶器」とまで言われていた。「交通戦争」克服が叫ばれていた。

 

それからおよそ半世紀、官民合わせての苦労が実り、昨年の交通事故死者は3500人までに減った。およそ5分の1だ。客観的なデータでは状況は随分と「安全度」を増した感がする。かといって安心できる世の中かといえば、誰しも不安だ。ものごとは数字だけでは語れない。

 

大津市のこの事故は「右折直進事故」の典型だ。車の登場以来、数限りないほど繰り返されてきたパターンだが絶えることはなく、不幸が重なれば今回のような事態となる。「交通戦争」の昔と何ら変わりがない。

 

車は「走る凶器」は死語になったわけではない。この文明の利器は、油断をすればいつでも凶器に変わることを戒めているのだ。運転者の基本的な心掛け。自動ブレーキの必要性。ガードレールの無い歩道。この事故が改めていろいろな課題を浮かび上がらせたような気がする。歩行者を守る事故対策の徹底が急務だろう。