塀の内と外

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♪春は名のみの風の寒さや  体力づくりにとウォーキングをぼちぼち始めたが、温室暮らしをしていた身には早春賦の歌詞が頭をよぎる。

 

病棟のスタッフステーションの向かいに6~7人が腰かけられるロビーがある。ある月曜日の午前、キャリーバッグを引いて来た5~6人の中高年男女が係員の説明を聞いている。やがてそれぞれの担当の看護師がやって来て病室へと案内する。

 

その光景ときたら団体旅行のバスがホテルに到着し、ロビーで係員の説明後ボーイや仲居さんに案内されて部屋に入って行く様に重なって見える。「病」という塀を境にしてその内と外では天と地ほど違うものだ。

 

塀の内の人達はロビーから病室に案内されている間の心境は「不安」だらけ、塀のそとの人達はこれから始まる豪華ディナーの「楽しい宵」への期待でいっぱい。塀の内と外での人生はこんなにも違うのだ。

 

塀伝いに歩いても、、間違っても絶対内側に落っこちるな。と他人は言う。不幸にも内側に落っこちたクマさん、自販機のコーヒーを手にして一日でも早い出所を思い描きながら新入りの入所風景を眺めるのだった。

 

                      3月2日 記