とんぷく

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パンデミック世界保健機関(WHO)が宣言した。株価は大きく下落し、各国の渡航制限で人の出入りがとどこおる。世界的な規模で経済の基礎体力が奪われるうえ、スポーツや文化活動も中止が相次ぎ、世の中から感動やうるおいが消えゆく感だ。世界中のだれもが経験をしたことのない。そんなことにはお構いなく我が家の庭の草木は春の装いだ。

 

子どもの頃ことだ。富山の置き薬屋さんが家庭用の常備薬の入った箱を各家庭に置いて行き、翌年の同じ時期に訪れ使った薬の分を精算して行った。箱の中身はあまり記憶がないが、包帯やら、赤ちんなどもあった。石炭を薄っぺらくしたような、真っ黒な苦い胃薬もあった記憶だ。「とんぷく」という粉薬は風邪をひいたときや腹痛の時飲んだ。

 

それからおよそ70年。近代的な設備を誇る病院に入院して「とんぷく」にお目にかかったのは驚きだった。毎食前後の定期的に服用する薬の袋には「おくすり」と書いてある。便秘薬のような必要な時だけに服用する薬の袋には「とんぷく」と書いてある。ネット検索。薬を何回にも分けずに1回に飲むこと。発熱や痛みなどの症状が出た際に、薬を1回だけ飲むこと。また、その薬。1回服用する分を一包にしてある。頓服薬。とある。

 

日露戦争の時、兵隊に持たせた胃腸薬に「征露丸」と名付け、100年以上経ったいまでも「セイロガン」として健在の薬があるように、薬の業界は昔からの体質が今に息づいているのだろう。