多民族・多宗教国家マレーシア

きょうは立春。決まり文句の「暦の上では春だが、まだまだ風は冷たく・・・」どころか、きのうも各地でこの冬一番の冷え込みになったばかりだ。「暦の上の春」はどうも”あて”にならない春のようだ。


人口28百万人のマレーシアはマレー人(66%)中国人(26%)インド人(8%)からなる多民族国家。にもかかわらず、民族間の紛争などのニュースも聞いたことがない。そこには何があるか、日本に留学したことのある40代の男性ガイドに色々と尋ねてみた。



イギリスの植民地から独立したマレーシアでは富の不均衡が最大の社会問題だった。都市部では一部マレー人の富裕層と植民地時代に移民した中国人とインド人が経済の実権を握り、一方、多数派のマレー人は農村で貧しい暮らしをしていた。40数年前にマレー人と中国人との間に衝突が起きたのをきっかけに貧困の撲滅と経済格差の縮小を目標とする経済政策が打ち出された。この政策は雇用・進学・経済などの面からマレー人を優遇することで国全体のレベルアップを図るものだった。そして、多数を占めるマレー人のイスラム教を国教とし、それぞれの民族の宗教の信仰の自由を保障した。



現在、公務員の90数%がマレー人。従って公共機関では毎日の昼休みにモスクで礼拝する時間が設けてあり、金曜日には3時間近い昼休みになっている。当然のことながら、イスラム教徒の女性は頭にスカーフを被っている。戒律の厳しい中東から来た女性は目を出しただけの衣服をまとっている。国立のモスクを見学した際、わが旅行メンバーの女性は写真のような装束を着せられた。



マレーシアは大航海時代から太平洋戦争が終わるまで世界の列強の侵攻にさらされてきた。独立後は多民族、多宗教の問題を乗り越えて地味ではあるが東アジアの優等生的存在ではないだろうか。