定年退職後


彼岸花は律儀な花だ。あさって20日が彼岸の入りということを、どこから聞きつけてきたのか、ちゃんと咲き始めた。ここ、丘陵地にある民家の庭沿いの路傍に毎年今頃になると咲く白い彼岸花だ。台風一過で、いっきに秋が来たことを実感させられる彼岸花だ。


彼岸花といえば、遠くは半田の矢勝川近くは豊田の逢妻川の堤防を真っ赤に彩る群生する赤い彼岸花、あるいは田んぼのあぜ道などに自生する赤い彼岸花をイメージするが、クリームがかった白い彼岸花もまた味わい深いものがある。



ある作家が新聞のコラムにこんなことを書いていた。
カルチャーセンターに通っていたことがあった。受講生は大半が主婦で定年退職した男性も何人かいた。彼らは退職後もその肩書きに固執していた。が主婦たちはそんなものにはまったく関心が無い。教室で主婦たちが一目置くのは講座での成績の良い人のみである。


男性たちは、自分なら敬意を持って迎えられて当然で軽く扱われるのが不愉快かつ不可解な様子だった。肩書きのなくなった人間は素の人間性のみで評価される。世間から敬意を持って迎えられたいなら、人としての研鑽を積むしかない。


ざっと以上のようなことを書いていた。一般論としてこういうことはあり得ることかもしれない。かれこれ8年ほどお世話になっている市の生涯学習講座に引き当てて考えてみると、その作家の言っていることは小説の世界の中のことのように思われてしかたない。


現役時代の肩書きに固執するほどプライドの高い者だったら、主婦と机を並べて学ぶようなことはプライドが許さないだろう。名刺で仕事をしてきた者に名刺がなくなったら、世間とどう付き合うか心得ている者しか生涯学習講座とかカルチャーセンターで学ばない。と思うのだが・・・・。