ポッポ屋の矜持


台風23号の影響か薄日が差す程度の日和で最高気温も30度になることもなかった。窓を開け放して車を走らせると、どこからともなく秋の匂いがいっぱい入ってくる。金木犀だ。これを、トイレの芳香剤の匂いとぬかす無粋な輩がいる。いっぺん、三好に来るがいい。


2日間日記を休むと、ひきだしの中で出番を待っていた写真から「早くアップせよ」コールが激しい。きょうは藤岡緑化センターのロックガーデンに咲くナンバンギセルだ。草丈15cmくらい。赤紫色の美しく大きな花で、ススキの根元でうつむいて咲く。この花「全寄生植物」といって、他の植物から栄養を調達して育つ。栄養の調達先はススキかミョウガ。名前の由来は南蛮人の使っていたキセルに花が似ているところから。



鉄道員一筋に人生を送り、一人娘を亡くした日も愛する妻を亡くした日も列車の安全を守るために駅に立ち続けた高倉健演じる佐藤駅長。浅田次郎原作で映画化された「鉄道員」だが、JR北海道の事故と管理の杜撰さが明るみになるたびにポッポ屋のあの矜持はどこに行ってしまったかと思い起こされる。あれは、フィクション。現実とは違うと云えばそれまでだが・・・。


JR東海名古屋駅に超高層ツィンビルを建て、9兆円もかかるリニア新幹線を自前で建設する一方でJR北海道は半分以上がローカル線で赤字だらけ。国鉄分割民営化の際、最初から赤字がわかっているから経営安定基金なる持参金が付いていた。この基金がどんなカラクリがあるか知らないが、破格の利率で運用されている。両社の従業員の士気の差は明らかだ。


現場の管理、チェック体制、社員教育など安全を最優先に取り組む鉄道会社の使命をゼロから見直すことは当然だが、地方都市の赤字路線バスがコミュニティーバスにとって代わっているように、赤字ローカル鉄道も社会基盤の一環としてもう一度見直す必要があるのではないだろうか。