居心地のいい塀の中


週末から週明けのきょうまで3日続きの猛暑日。週末から今週にかけてのここ数日は、大雨、猛暑と「荒」・「暑」の2文字に悩まされる列島だろう。


そんな中日曜日は家庭菜園の一斉草刈日。普段見かけても気にも留めずに通り過ぎてゆくツユクサも、草刈のときにゆっくり眺めると朝露を受けている様など朝日に映えるあのブルーが美しい。何といっても、あの花の形がミッキーマウスに似ているのが愛嬌でいい。


隣の区画の畑ではホオズキを栽培している。真っ赤なホオズキとグリーンの葉のコントラストが畑の中で異彩を放っている。菜園の外に目を転じると、栗林の栗のイガが燦々と注ぐ日光を浴びて随分と大きく育っている。夏本番だ。



10日くらい前だったかメキシコの麻薬王が長さ1.5キロもの地下トンネルをを伝ってまんまと脱獄に成功した事件がテレビでも新聞でも報じられていた。半世紀以上も前に公開され、その後テレビでも何回も放映されたスティーブマックゥイン主演の映画「大脱走」をほうふつさせるできごとだと感じたのはクマさんだけではないと思う。


映画の方はナチスの捕虜になった連合軍の将兵たちが地下トンネルを掘って収容所から脱走をもくろんだもので、爽快だ。麻薬王の方は刑務所の職員の手助けの疑いが出て映画のようなさわやかな印象はない。


先ごろは米国でも脱獄が世を騒がせた。世界の刑務所の多くは、脱走を防ぐのに苦労しているだろう。ところが、日本ではちょっと事情が違うようだ。3年前生涯学習講座で名古屋刑務所を見学した。2012年1月19日のクマさんの日記の一部抜粋だ。その中に日本固有の事情が隠されているようだ。



過去2度見学したことがあるが、いずれも誰も人がいない休日の作業所の中とか風呂場くらいだったが、今回はいわゆる雑居房や独房の並ぶ生活棟中のまでの見学だった。それだけにポケットの中にあるものはすべてロッカーに預けさせられた。もちろんペンまでも。ペン型のカメラだってあるし、凶器にもなるからということらしい。


ウチから歩いて10分もかからない距離にあってもその中のことはほとんど知らない、近くて遠い存在の刑務所。大変興味があった。名古屋から移転してきたのは昭和40年で半世紀になる。全国に77か所ある刑事施設で4番目に規模が大きい。収容定員は2400人で現在2200人収容されている。うち外国人は約200人。ブラジル、イラン、中国など。平均年齢は46歳。名古屋刑務所は26歳以上しかも刑期10年以内で過去に刑務所に入った経験のある者を収容している。暴力団関係者が43%を占める。収容者の罪名は窃盗、覚醒剤がほとんど。


受刑者は何らかの作業につく。平日8時から16時40分まで。余暇時間17時30分から21時。作業内容は木工、印刷、板金、自動車部品など。報酬は人によりまちまち。平均1ヶ月3千円。雑居房は6人部屋。余暇時間には備え付けのテレビを自由に見られる。出所の際、感想文をを書かせると、一様に雑居房での人間関係の難しさを訴えているそうだ。医療設備も整っていて、手術室、人工透析室、歯科治療室、X線室(CTスキャンを含む)、心電図・脳波検査室、超音波・上部下部消化管内視鏡室などあるという。



上記カキコのデータは3年半前のもの。最新のデータでは2400人の定員に対し2426人収容している。26歳以上で過去に入所経験のある者が増えている。3年前に聞いた話でも、目立つのは、世間に親しい身寄りも友人もなく、職や身の置き所を見つけられない高齢の受刑者だそうだ。


更生させるのに1ヶ月平均3千円の報酬が適正かどうか非常に悩むところだと係官が漏らしていたのが印象に残っている。塀の中人工透析まで受けられるともなれば、塀の外より塀の中の方が居心地がいいと感じる高齢者が少なくないというのが現実ではないだろうか。いささか落ち着かない気分を覚えてしまう。