もうひとつの「日本のいちばん・・・・」


青空の盛夏が戻った。三好丘にある名古屋刑務所。その正門の前の通りはエンジュの木の街路樹が両側の歩道に300mくらい続いている。排気ガスに強く、伸びすぎないので用いられているようだ。7月の初め頃から黄色い花が咲き、散ったあとは木の下はまっ黄色だ。そろそろ、花も終わりを迎えている。秋近しのサインだ。やがて数珠状の豆の実をつける。


田園地帯にも秋近しのサインだ。農道の両側にある田んぼ、稲穂が膨らんできた。やがて頭をもたげるほどに生長する。一方では、きのうの雨の上、盛夏が戻って元気百倍なのがウチの花壇転じて野菜畑のオクラだ。まだまだオクラならぬオイラの季節を謳歌している。



先週の金曜のまさかの転倒、ヘッドスライディングで土曜は朝のウォーキング以外は家の中で引き籠っていた。NHKBS放送で1967年(昭和42年)制作の映画「日本のいちばん長い日」(岡本喜八監督)を観る機会を得た。その週の月曜に映画館で観たばかりの同名の作品(原田眞人監督)も共に昭和史研究の第一人者半藤一利の同名のノンフィクションを映画化したものだ。



オーケストラの指揮者によって作品の表現の仕方が変わってくるように、両監督がこのノンフィクションをどう捉えてどう描くか非常に興味があった。11日の日記にも岡本監督の作品を残念ながら見てないので・・・とカキコしたが1週間もしないうちにそれが実現した。


岡本作品はドキュメンタリーを中心に据えて描いているように見受けられた。したがって、宮城事件のドキュメントに時間の多くを割いていた。宮城事件とは時の内閣はポツダム宣言の受諾を連合国側に通達していたが、これに陸軍が反発、8月15日に予定されていた玉音放送を阻止し、戦争を継続させようと目論み、皇居へと襲撃をかけ制圧されクーデターが失敗した事件のこと。


11日の日記にもカキコしたが、岡本作品では昭和天皇がご存命中で畏れ多くも姿をスクリーンに出すわけには行かなかった。昭和天皇の存在感の扱いが両作品に大きな差があった。原田作品では天皇の人間らしさをエピソードをまじえながら描いたシーンがかなり見られた。元木雅弘演じる昭和天皇は実にうまい。



原田作品は「聖断」を下された昭和天皇、元侍従長だった鈴木首相(山崎努)、元侍従武官だった阿南陸相役所広司)を軸に降伏か徹底抗戦か極限的な攻防が続く中での人間的な側面も豊かに描いている。ヒューマンドラマを軸にしたドキュメンタリーが原田作品なら岡本作品はドキュメンタリーを軸にした近現代史ドラマといったところか。           


岡本作品の鈴木首相役の笠智衆小津安二郎作品に出てくる日本の父親のイメージが余りにも強すぎて適役には思えない。阿南陸相役の三船敏郎はやはり貫禄がある。原田作品の同役役所広司も世界のミフネに勝るとも劣らない演技だ。


両作品の優劣は観る人の捉え方次第だろう。クマさん的には聖断を下される人間昭和天皇としての苦悩や、本土決戦を主張する軍部でありながら、軍人としての誇りに背きながらも昭和天皇を支え平和的解決を選んだ男阿南陸相の覚悟と悲哀を描いた原田作品の方に惹かれた。