長良川鉄道「ながら」


晴れたり曇ったりの寒の内らしい天気の一日。それでも、平年より気温が2.3度は高いらしい。先日来の3、4月並の陽気に身体が慣らされているせいだろう。きょうのような雲の多い天気では、冬特有な澄んだ空気で遠くの景色がクリアーに見えることはないが、土曜日にはウォーキングコースにあるワイナリーのテラスから東を望む豊田の景色はなかなかのものだった。


正面のひときわ高い山が焙烙(ほうろく)山。豊田市内で一番高い山だ。683m。猿投山が高いと思っていたが629mだ。右上の↓印の下に、傘の骨組みみたいなものが見える。豊田大橋か豊田スタジアムかどちらかだ。三好丘に越して来て20年。初めて見る景色だ。


先日、テレビのニュースで岐阜県の第3セクター長良川鉄道美濃太田北濃72km)が2両編成の観光列車「ながら」を導入して4月から運行を始めるということを伝え、代表者がその意気込みを語っていた。          


既存の2両を観光列車にリニューアルする。食堂専用車両は食事代込みで1万円以上を想定しているらしい。内外装をのデザインは「ななつ星in九州」や「或る列車」でおなじみの工業デザイナー水戸岡永鋭治氏が担当しているという。




一方では豪華寝台列車「クルーズトレイン」が来年の春、JR東日本と西日本でデビューすることがきょうの朝日新聞デジタル版に出ていた。ブームの火付け役となったJR九州の「ななつ星in九州」はスタートして3年目をむかえても抽選倍率が26倍の人気ぶりとか。


JR東の「トランスイート四季島」は10両編成17室34人定員で最高料金60万円以上。上野発着で日光、鳴子温泉弘前会津若松、登別への周遊。JR西の「トワイライトエクスプレス瑞風(みずかぜ)」は10両編成16室約30人の定員で料金は未発表。京都・大阪〜下関間を山陽、山陰側いずれかの片道か、両方を周遊するルートになる。



長良川鉄道がめざしたのはJR九州の豪華スイーツ列車「或る列車」だろう。戦前の「九州鉄道」が発注していたにも関わらず活躍する機会のなかった、アメリカ製の豪華客車。その幻の列車を、水戸岡鋭治氏がスイーツ列車として現代に誕生させたのだ。


現在大分〜日田間、長崎〜佐世保間で運行されている。基本の料金が2万円。前述の豪華寝台列車とは客層のレベルが違うだろう。「或る列車」には器に物語性があり、それを運営しているJR九州には特殊列車を扱うのに必要なノウハウが蓄積されている。傍目には長良川鉄道が安易に飛びついたような気がしてならない。



長良川鉄道に関係する方々には申し訳ないが、プロ野球に例えるならば、セ・パ12球団がドーム球場を造ったり色々なファンサービスをして観客を増やしている。長良川鉄道という地方の独立リーグの一チームが球場をドームに改装して客を呼ぼうとしているように見えてならない。


国鉄の越美南線の廃止が決まった時、名鉄美濃町線と越美南線とを関駅付近で線路をつなぎ岐阜から郡上八幡方面に直通運転の案が浮上していた。これが実現していたら越美南線、美濃町線の運命は変わっていただろう。長良川鉄道はなかったかもしれない。残念ながら「幻の鉄道」に終わっている。                    


「幻の列車」は「或る列車」で蘇った。「幻の鉄道」が歴史から消え去ってしまうかもしれない。「長良川鉄道」の歴史の中で「或る鉄道」として後世に継いでほしいものだ。そのためにも、初志貫徹で観光列車「ながら」を成功させてほしい。