東山魁夷 心の旅路館


梅雨真っただ中らしい一日。きのうの夕方から降り出した雨が午前中降り続いたが、相変わらずの梅雨空だ。


東山魁夷といえば、奈良・唐招提寺や皇居の障壁画を手掛け文化勲章の受賞者でもある昭和を代表する日本画家だ。そんな大物画家の美術館が木曽路国道19号線道の駅にひっそりと併設して建っている。美術館に併設して道の駅があるのではないのだ。



なぜ木曽路にこの施設が? 館内に入ってその疑問がすぐ解けた。彼のメッセージが展示されている。画学生のとき御嶽登山に訪れ、山口村(現中津川市)賤母(しずも)の山林で夕立に遭いその地の農家で温かいもてなしを受けた。この旅で、木曽の人達の素朴な生活と、雄大な自然に心を打たれ風景画家への道を歩む決意をしたという。


70年の歳月の後、彼は青春時代の思い出の地へと所蔵のリトグラフ木版画500点を山口村に寄贈し、翌年賤母の地に「心の旅路館」が開設展示された。平成7年のことだ。その後全国的にも珍しい越県合併で長野県山口村は岐阜県中津川市編入され、寄贈作品も中津川市に引き継がれた。賤母(しずも)の地に展示施設があってこそ、彼の遺志が生きているのだ。てなことで、賤母の地に施設があるわけがわかった。



正式名称は「東山魁夷心の旅路館」。中津川ICから国道19号を木曽方面へ約20分。道の駅賤母(しずも)に併設されている。絵画、書、木版画リトグラフ、ペン画、鉛筆スケッチが併せて44点展示されている。彼が木曽へのメッセージの結びで「この地を通り過ぎる旅の人達にとって、暫しの安らぎと憩いの場になれば・・・」と述べている。


それにしては、道の駅の奥まったところに遠慮がちに建っている。分かりにくい。「心の旅路館」目的で来た人ならすぐ見つかるが、そうでない人にアピールするには存在感が薄い。それでもいいのではないか。こうした類の施設は観光バスで大勢の人が来るのではなく、公共の施設だから「暫しの安らぎと憩いの場」として、「知る人ぞ知る」存在であってもいいのではないだろうか。