聖地巡礼


きょうで9月も終わり。今年もあと100日を切ったと聞くと、なんだか気がせく。もう、そんな時季になったんだ。でも、まだ今年は爽やかな秋晴れを感じたことがないじゃないかなぁ。日照不足で野菜が高いだの、去年からサンマが不漁だのと食欲の秋も重苦しい。


地域の老人会の旅行で信州上田の真田丸ドラマ館を訪ねた。このドラマ館はNHK大河ドラマ真田丸」のストーリーに合わせ、撮影で使用するセットや出演者が着用した衣装などを展示し、大河ドラマの世界の魅力を紹介している。築城から約400年、今は西の隅櫓が残るだけの城址公園の中に、今年の1月から来年の1月までの期間限定でドラマ館が設けられている。



開館以来8ヶ月で約70万人の入館者があったという。人口16万人、知名度もそれほど高くない地方都市で1ヶ月10万人ほどの集客力があれば、イベントとしては成功といえるではないだろうか。このイベントが引き金となって永続性のある観光地になったときが本当の成功と云えるのではないだろうか。映画「ローマの休日」が代表例ではないだろうか。



映画やドラマの舞台となった場所に行けば、描かれた風景の本物が待っている。嬉しくなっちゃう。ブームを呼び、それがいつまでも続く。半世紀以上前の映画「ローマの休日」はオードリーヘップバーンを大女優にさせ、ヘップバーンカットやヘップバーンサンダルを流行らせたなどファッションの世界でもひとつの流れをつくった。


半世紀以上を経たいまでもブームが続いているのはイタリア、とりわけローマの観光地だ。ローマのスペイン広場でヘップバーンがジェラートを食べるシーンがあった。「真実の口」に手を突っ込むシーンがあった。初めてローマを訪れる観光客はグレゴリーペック演ずる新聞記者とヘップバーン演じるアン王女にわが身をダブらせながらの観光。半世紀以上経ってもかなりの数にのぼるだろう。



こうしたロケ地観光も実写の映画やドラマからCGで描かれたアニメの世界にも広がっているようだ。孫が映画館で「君の名は」を見て来たという。一瞬耳を疑った。我々の知る「君の名は」とはストーリーも舞台も全く違うアニメで飛騨市が舞台でいま「飛騨古川」は脚光を浴びているそうだ。


白壁の土蔵街と、それに沿って流れる石造りの瀬戸川に泳ぐ大きな鯉の大群。昔ながらの佇まいの造り酒屋。和ろうそく屋。街で行き交う人たちが、みな親切だ。三度、四度訪れている。隣接する高山より静かで落ち着いた雰囲気が気に入っている。


アニメ映画のロケ地観光を「聖地巡礼」というそうだ。飛騨市というより古川と云った方が身近に感じる。その古川が「聖地」になりつつある。誇らしい気になる。「真田丸」から「ローマの休日」、「君の名は」。いろいろ空想し出すと興味は尽きない。