障害・健常ボーダーレス


朝から雲が主役で今にも降り出しそうだったが、どうやら夕方までは降ることもなく日が暮れた。


昨夜床に就く前に読んだ新聞記事、今朝のラジオ深夜便の「あすへの言葉」、引き続きの毎朝ラジオの「ふるさと便り」のテーマはいずれも画家と精神障害に関することばかり。竹内まりや唄う「縁(えにし)の糸」の一節「この世で出会う人とはすべて、見えぬ糸でつながっている」と思えてくる。



先週火曜の中日夕刊。「ゴッホ・耳切り事件の新事実」と題するオランダ在住の画家吉屋敬氏が寄稿した記事だった。ゴッホの狂気とその作品への影響、自殺の真相の解明を試みた特別展「狂気の淵で」が今夏アムステルダムゴッホ美術館で開かれたそうだ。この美術館は昨秋訪れゴッホを鑑賞したところなので興味深く読んだ。


ゴッホの耳切り事件は、唯一の証人ゴーギャン回顧録の記述がこれまでの通説だった。伝記「炎の人ゴッホ」を書いた米人作家が執筆にあたって医師に耳を切った状況を問い合わせ、その返事の手紙が米国の図書館で発見され、その手紙が展示されていた。憶測に基づいていた論争に終止符が打たれたという。また、自殺に使ったといわれるピストルも展示されていた。


吉屋氏は最後にこう結んでいた。ゴッホの狂気と自殺について病名は「境界性人格障害」といわれていたが、ゴッホが弟に充てた手紙に「ぼくの絵に対してぼくは命を懸け、ぼくの理性はそのために半ば壊れてしまった」と書いている。この手紙に書かれた冷静な自己分析は、ゴッホの狂気が作品に影響を与えなかったことを何よりも証明している。



前記のような記事を読んで目が覚めラジオをつけたら、深夜便「あすへの言葉」。ゲストは近江八幡市にあるボーダレス・アートミュージアムNO-MAのアートディレクターはたよしこ氏。テーマは「障害者のアートの魅力」。  途中から聞いたので詳しいことはわからない。

                               
自閉症をはじめ障害のある人の表現活動の紹介に核を置くことだけに留まらず、一般のアーティストの作品と共に並列して見せることで「人の持つ普遍的な表現の力」を感じてもらうことにある。このことで、「障害者と健常者」をはじめ、様々なボーダー(境界)を超えていくという実践を試みているという。




深夜便が終わり、5時からは毎朝ラジオ。レポーターが全国からその地方ごとの「ふるさと便り」を5分くらいリポートする。けさのこの時間は岩手県花巻。詩人、彫刻家の高村光太郎没後60年、妻智恵子生誕130年の今年。生前7年間この花巻で過ごしたことで設立された高村光太郎記念館では企画展智恵子の紙絵展を今開催中。


新鋭の画家として注目されるなか智恵子は自身の油絵に対する芸術的苦悩や実家の一家離散が重なり、心の病に侵され睡眠薬で自殺を図ったが未遂に終わった。長い療養生活に入り、精神病には易しい手作業が有効ということで身の回りにあった色紙や包装紙など、様々な紙を切りぬき、台紙に貼りつける「切り抜き絵」を多く制作した。


たまたま自分の見聞した事柄を無理に関連付けたといえば、そうかもしれない。しかし、昔は隠した体や心の障害がパラリンピックでみるようにボーダー(境界)がなくなり、社会進出が広がったから、「狂気の・・・」とか「障碍者のアート」などとオープンに語られるようになったということだろう。