金正男殺害に思う


きのうの暖かさで、ウォーキングの道すがらのあちこちで白梅が一気に花開いた。今にも降り出しそうな暗い空でも、梅の木のまわりだけはぱぁ〜と明るい感じだ。梅の木の背後の山茶花の垣根、くたびれた姿の花びらが主役交代を意識してか精彩を欠いている。午後からは小雨が降り続く。「春雨じゃ、濡れて・・・」には、ちと早すぎるきょうの雨。



北朝鮮金正男がマレーシアのクアラルンプール空港で殺害された報が今週は世界を駆け巡っている。斜に構えてみるクマさん的見方からすると、史実とはかけ離れた見方かもしれないが、正男は一面では源義経に重なり、またある一面では原作の意図とは異なるかもしれないがフーテンの寅さんの姿に重なって見える。


登場人物の金正男金正恩源頼朝源義経、車寅次郎、諏訪さくら。いずれも「実」でなく異母兄弟、異母兄妹だ。実在人物あり、映画の登場人物ありだが、これも何かの縁。没年義経31歳、正男45歳、 寅(渥美清)68歳
みな「異母」ということのプレッシャーのせいか早死にしている。                                                



兄正男と弟正恩の立場こそ違え北朝鮮版「兄頼朝と弟義経の確執」と同根だろう。両者とも異母兄弟。権力の座に就いた方が、その座が兄弟に脅かされないかと懸念がつきまとう。ましてや、儒教のいうところの長幼の序を重んじる朝鮮のことだ。弟正恩にしてみれば、兄正男の存在は目の上のたんこぶだろう。


義経は数々の武功で朝廷政権の枠組みの中に入ってしまっている。兄頼朝にしてみれば、武家政権の確立をめざしているというときに弟義経の行動は、金正恩と同様目の上のたんこぶであったにちがいない。兄正男は中国の保護下に置かれいつ復権をたくらむかもしれない。それも目の上のたんこぶだった。                 



弟正恩は冷徹なやりかたで兄の復権の芽を摘んだ。この2組の異母兄弟、政権に就いた側は兄弟に対して実に冷徹な仕打ちをしているのだ。「実の兄弟」でなく「異母兄弟」だから平気でそれができるのか?「実」「異」関係なく政権の座がそうさせているのだろうか?


寅さんも異母兄妹だ。芸者との間に生まれた寅さんと本妻の子妹さくら。兄正男、ひょうひょうとしてアジア各地に出没する姿はやはりフーテンの寅だ。金ファミリーのなかで、唯一人間味が出ていたのは彼だった。異郷をさまよった彼も、じつはずっと以前から狙われていたという。フーテンの風情は身を守るすべであったかもしれない。