街道の博物館伊勢神峠


きのうまでの五月晴れとはうってかわって雲が主役の空模様。夕方からは小雨。地域の老人クラブのメンバー40人が市のバスに乗って日帰り研修旅行。足助、稲武へ訪れた。道すがら、バスの中でのレクチャーを頼まれ、30分ほど「塩の道」について語った。4年前に生涯学習講座「塩の道」で学んだことを下敷きにした。


その中でも伊勢神峠に一番重点を置いて話したつもりだ。また、こんな機会があるかもしれないから、まとめておいてみた。


三河伊那谷を結ぶ伊勢神峠(標高770m)は「中馬の時代」「運送馬車の時代」「自動車輸送の時代」の三時代の道が隣接して残っており、街道の変遷を知ることができる博物館的な場所。


● 伊勢神宮遥拝所 (中馬の時代)

峠を通行する旅人が遠く伊勢神宮を拝んだ場所。「伊勢拝み」が訛って「伊勢神」になったといわれる。伊勢神宮遥拝所は伊勢神峠に限らずこの地方では随所にあったそうだ。



● 旧伊勢神トンネル (運送馬車の時代)

運送馬車運行のために明治30年に作られた。(標高705m)長さ308m、幅3.15m。今でも通行可。懐中電灯たよりに徒歩で通行したことがある。トンネル内は外気温より5度は低い。このトンネル建設の際、小銃を背中に担いだ騎兵隊が2列でらくに進めることを条件に高さや幅が決定されたといわれる。


● 現在の伊勢神トンネル (自動車輸送の時代)

自動車の大型化により昭和35年に作られた。(標高640m) 長さ1245m 幅6.5m。このトンネルも完成後半世紀以上経ち、1日の通行量4200台、そのうち約3割が大型車で大型車同士のすれ違いがままならない状況。大型観光バスの通行がスムーズになれば観光客の増加も見込めることから数年先の完成をめざし新トンネルの工事が始まっている。数年後には第4の街道の歴史の変遷が始まる。


● あとがき
新伊勢神トンネル建設の予算措置にあたっては「コンクリートから人へ」を標榜する政党が地元では我々が予算を取ったとブチあげている。この街道は「塩の道」の時代から今に至るまで”歴史の皮肉”をはらんだ街道のように思える。