侮るなかれ 経験則


台風に次ぐ木枯し1号で空がきれいに掃き清められた。そのスカイブルーに映える色づき始めた桜公園周辺のナンキンハゼ。見事なコントラストだ。そして、そのスカイブルーが茜色に染まる夕景色。部屋の窓から暫し見とれた秋の夕暮。



今度の台風22号が南太平洋で発生して、日本に向かっていた先週の水曜日頃だと思う。テレビで気象予報士がこんなことを云っていた。「富士山初冠雪後に来る台風は上陸しない。という言い伝えが漁業関係者の間にある。21号が上陸したが、その後富士山の初冠雪があった。したがって、22号は21号と同じようなコースをたどるが、多分上陸はしない」


経験則によるその言い伝えにも科学的根拠があるという。雪が降るほどの寒気が大陸から入ってくるという事は、反対に台風を日本の近くまで運ぶ太平洋高気圧の勢力は弱まっていると言える。その上、過去30年間の富士山の初冠雪の日と、その年最後に台風が上陸した日を比べてみると、5年に1度くらいしか例外がない。と予報士は云っていた。きょう、北海道の北東の海上熱帯低気圧に変わった22号は列島の東沿海部を北上して、中心部は確かに上陸しなかった。なるほど、経験則による言い伝えもちゃんと科学的根拠があるものだ。




そういえば、中国桂林に旅行したとき、現地の人しか行かないレストランで飲んだビールが全然冷えてないのには閉口した。後で現地ガイドに聞いたら、中国人は朝はかゆかミルクたっぷりの紅茶から。昼夜とも生野菜は避け、魚は焼くより蒸す。冷えたビールは風邪のもと。こんなことを強調していた。これも、中国4千年の歴史の経験則だろう。



1ヶ月ほど前の朝日天声人語で読んだ。今や、香港が日本を抜いて男女とも長寿政界一。男81歳、女87歳。とかく健康か病気かの二元論で考えがちだが、中国、とりわけ香港では二つの間に「亜健康」という領域があると考える。「準ずる」の意だ。病気なら医療に頼るが、亜健康なら生薬を煎じた茶を飲み、食で体調を整える。そんな思想だ。


日頃からバランスの取れた美味しい食事をとることで病気を予防し、治療しようとする医食同源の4千年の歴史に基づいた経験則と老人を大切にするという伝統がもたらした成果だろう。侮るなかれ経験則。