プライドが引き起こすミスへの対応


史上最強・最長の寒波とやらで、太平洋ベルト地帯の東海道新幹線沿線以外の列島はどこも雪に見舞われているといった感じだ。冬の金沢での10年間のことを思うと、同じ税金で日差しのある間は暖房もなしで過ごせるこの地のなんとありがたいことか。


目に飛び込む風景も彩の乏しいウォーキングコース。四つ池周囲の桜の冬芽も順調に育っているようだ。花芽と葉芽が肉眼でわかるほどだ。ハゼの木の葉痕(ようこん 落葉した時茎の表面に残る傷跡)。今年は伐採されて木そのものがなかった。



日本紳士録という出版物がある。官僚、企業の役員などのうち、現在活躍している人物の情報を掲載した本なのだ。現役時代のことだ。新しく役員になった部下が相談に来た。紳士録の会社からその部下に名前を掲載するからと勧誘があったがどうしたもんだろうと。掲載料はウン万円。彼の出身大学の先輩や元の上司の自筆の申込書も見せられ本物に間違いなかったという。


「危ない、やめとけ」で事なきを得たが、引っかかった連中はプライドがあるから絶対に口外しない。だから、噂が広がらない。人のプライドを悪用したえげつない商法だ。この場合被害者は申込者ひとりだけで済むわけだが、大阪大学の30人合格ミスは天下の阪大というプライドが災いした事件ではないだろうか。



昨年2度にわたって外部から問題の誤りを指摘されながら、取り合わなかった。阪大のプライドが誤りを簡単に認めさせなかったのではないだろうか。30人の不利益を最小限に抑える機会をみすみす逃していた。不利益者が最小限に抑えることができたはずのミスがプライドが災いしてミスへのアプローチを間違えさせたのだ。



先日どの新聞だったか忘れたが、デジタル版でこんな記事を読んだ。「全米で医療過誤による年間死亡者数は最新のデータで約40万人。全世界で年間延べ約4000万機の民間機が40億人近い乗客を運んでいる。昨年全世界で死者を伴う航空機事故は10件で44人が死亡している」とのことだ。


ミスに対する取り組みの違いだろう。航空機には「ブラックボックス」が装備されて、事故が起こればこれが回収されて徹底的に分析される。一方の医療業界は医師のプライドがなかなかミスを認めさせない。こんなことではないだろうか。孔子論語でいいこと言っている。「過ちて改めざる、これを過ちという」。「誤ってはならぬ」といってない。