事実は小説より奇なり


不安定な天気になるとの予報もはずれて、穏やかな秋の日となった。暑くもなく、寒くもなくグラウンドゴルフ日和だった。市の陸上競技場で市総合体育大会、グラウンドゴルフ大会。


テレビも白黒の時代、昭和30年代の初めNHKで「私の秘密」という番組があった。司会の高橋圭三アナの「事実は小説より奇なりと申しまして、世の中には変わった珍しい・・・」これが流行語になった。当時中学生だった。英国の詩人バイロンの「事実は小説より奇なり」なんて言う言葉をテレビを通じて憶えたものだ。



今週になって「事実は小説より・・・・」この言葉に真実味が増した事件が矢継ぎ早に起きた。フィクションである小説やドラマよりかえって不思議な出来事だ。ひとつは「地面師」グループによる詐欺事件だ。なりすまし屋、書類やパスポートの偽造屋などのプロを操って悪事を働く首謀者。米映画「オーシャンズシリーズ」を彷彿させる。


ジョージ・クルーニー演ずるダニー・オーシャンと彼が率いるなりすまし屋、爆弾屋、電気屋、IT屋などの犯罪スペシャリストが現実ばなれした痛快なアクションで楽しませてくれる。一方、地面師詐欺に55億円もの大金をだまし取られたのは、土地のプロである大手住宅メーカー。金銭以上に負った傷は深いだろう。フィクションでなく、現実の問題だ。



もうひとつは、サウジアラビア人の反体制派記者がイスタンブールのサウジ総領事館で15人の特殊部隊により殺害された疑惑だ。サウジの情報要員で元外交官の男性が「中心的な役割」を果たしていたとみられることが19日までにわかった。テレビでは自家用機で暗殺集団がトルコにある領事館に乗り込むシーンや、殺害現場を洗浄するために掃除夫が領事館に入るシーンが写し出される。



国務長官がこの殺害を主導したのではと疑いが持たれているサウジの王や皇太子と会談。まさに、007やミッションインポッシブルの世界だ。英秘密情報部工作員ジェイムス・ボンドやトムクルーズ演ずる秘密情報組織イーサンが活躍し暗殺集団と一戦を交えハッピーエンドになるところだが、事実はフィクションより奇なりだ。


米の同盟国であるサウジが国家主導で反体制派の言論封じるために殺害まですることに米は黙殺するわけにはいかない。かといって強気に出れば莫大な武器商談がご破算になる。米・サウジの関係が悪化すればイランをよろこばすだけだ。フィクションならハッピーエンド。現実は一触即発の国家間のせめぎあいだ。どちらの事件も事実はフィクションより相当深刻だ。