仁義なき戦い


おおむね晴れとはいえ、広く雲に覆われ、風が冷たい。そぞろ寒さのなか首をすくめながらのウォーキングだ。時折顔を出す柔らかな日差しのもと、ベランダで丹精込めた干し柿がきらきら輝く。こんな風景も懐かしい思い出になってしまった。「こんな面倒くさいこと、やってられない」とは、カミさんのセリフ。


「歳月は皮膚のしわを増すが情熱を失う時に精神はしぼむ」サミュエル・ウルマン「青春とは」の一節より。トシはとりたくないねぇ。


ウォーキングコースの三好丘丘陵地一帯は休耕田や荒れ地が多く、この時期セイダカアワダチソウのオンパレードだ。おかげで、日本の秋らしいススキ、彼岸花、コスモスなどはすっかり影が薄い。このセイダカアワダチソウ、あれほど真っ黄色に群生する植物でありながら万葉集や江戸期の風物詩には登場しない。


戦後渡来した北米原産の外来種だからだ。昭和40年代以降に大繁殖し、一時は喘息や花粉症の元凶と云われたが、その疑いは解消されたようだ。とはいえ、その驚異の繁殖力と持ち合わせている化学兵器の威力には目を見張るものがある。ネットで調べると、1平米に100本の密度で生え、1本で5万個、つまり1平米で500万個の種をつけるという。


セイダカアワダチソウの化学兵器というのは、その根に発芽・成長を阻害する物質が含まれており、それを分泌することによって周囲の植物を攻撃する。同じ環境に生えていたススキはどんどん制圧されていった。ただし、この毒が強すぎて、自分の成長も抑制してしまうそうだ。一方、ススキも最近は化学兵器の毒への耐性を獲得して逆襲が始まっているそうだ。



セイダカアワダチソウとススキの”仁義なき戦い”は留まることをしらない。古くからの”秋の七草一家”の兄弟ススキとクズが徒党を組んでセイダカアワダチソウに立ち向かっているのだ。クズの根はセイダカアワダチソウの毒が届かない深い所まで伸びて成長し、セイダカアワダチソウを覆ってしまう。                        


すると、クズの葉の重みと光の遮断で成長できなくなり、セイダカアアダチソウは枯れてしまう。一方、ススキはクズがつるを伸ばして広がっても、背の高い葉をその隙間から伸ばしているので影響はないのだ。この戦い”仁義なき戦い”の比喩も面白いが、大和種族の尾花(ススキ)と葛(クズ)の共生が外敵セイダカアワダチソウに立ち向かう図としても面白い。そんなことを感じた。