人間万事塞翁が馬


雲が主役で日差しがないものの、冷たい風もなく、まずは穏やかな初冬の一日だった。

中国故事から出た格言で「人間万事塞翁が馬(にんげんばんじさいおうがうま)」という謂われがある。これは、人生における幸不幸は予測しがたいということ。幸せが不幸に、不幸が幸せにいつ転じるかわからないのだから、安易に喜んだり悲しんだりするべきではないということだ。


先日の札幌でのガス爆発事故、連日の報道で詳細が少しずつ明らかになっている。きょうの昼のニュースでは負傷者が52人になったと伝えていた。それにしても、あれだけの事故で死者が出なかったことは奇跡に近い事ではないだろうか。それにつけ、あの事故は「人間万事塞翁が馬」の格言そのものではないだろうか。そんな気がする。




まず、発端となったスプレーだ。かつては不燃性のフロンガスを使っていた。地球の温暖化を防ぐためにオゾン層保護の観点から、約30年前に可燃性ガスに切り替えられた。人類の幸せによかれとフロンガスから可燃性ガスに切り替えたら、扱い方の不徹底とはいえ、却って不幸を招いてしまった。


次に、火事や地震に弱いとされた木造建築ゆえに分けた幸・不幸の明暗だ。不動産店と居酒屋が入居する建物は木造2階建てで全焼した。居酒屋では火が回って階段が使えなくなり、2階にいた客は床が落ちてようやく脱出できたという。この建物が鉄筋コンクリートだったら・・・。木造ゆえに床が抜け落ち2階から脱出できて死者が出なかったことだけは幸いだ。


被災された方には同情するが、スプレーのガスといい、木造建築といい、幸せが不幸に、不幸が幸せにいつ転じるかわからないのがこの世の常だ。そんなことが凝縮されている事故のように思える。

※ 画像は古代アンデス文明展 展示品