狭くなった地球


穏やかに晴れて日差しが暖かな日となった。こんな暖かな日和に桜の蕾がほころぶのも加速することだろう。


古新聞を片付けていたら2月1日の中日新聞の「総合」面に目が留まった。「難民に寛容」限界露呈、スウェーデン8万人国外退去へ 大きな見出しだ。昨年、人口比ではEU最大規模の難民を受け入れたスウェーデンは難民申請が却下された8万人を国外退去させる方針を明らかにしたという。「寛容な福祉国家」がこの変容だ。



一昨年の秋、欧州鉄道旅行でスウェーデンに行き目の当たりにしたこと、その後の生涯学習講座「不思議な国スウェーデン」で講師から聞いた話が頭の片隅に残っていたから新聞記事が目に留まったのだ。2014年10月12日のクマさんの日記の一部を抜粋するとこうだ。


驚いたことが二つ。コペンハーゲンからのストックホルム行の列車内で自分がバッグの盗難に遭い、ストックホルム中央駅に降り立ちタクシーでホテルまで約6000円。フロントで尋ねると普段はその半分以下とのこと。早朝ウォーキングで駅まで歩いたら10分位の距離だった。外国人だから、わざと遠回りしてボラれたのだ。



いまひとつ驚いたこと。街の中、とりわけ中央駅周辺に何と物乞いの多いことか。路上生活者と思われる集団も見られる。これが福祉大国の実情かと愕然とした。察するに、福祉の一環として移民を受け入れることまで寛容な国になった結果ではないだろうか?


同年12月2日の生涯学習講座の内容をカキコした同日付クマさんの日記の抜粋。講師は生まれも育ちもスウェーデン、名古屋在住の43歳男性。スウェーデンは60年代の高度成長期に労働力として北欧、東欧、南欧からの移民を受け入れた。70年代以降は労働移民を制限する一方戦争や政変での難民を受け入れ、最近では内戦状態のシリアからも受け入れている。



こうして多くの移民が流入し、現在同国に暮らす人の2割が「外国生まれか両親が外国生まれ」ということらしい。その移民に対して教育や福祉などの公的サービスはネイティブの国民と同等に保障してきた。ところが、90年代前半の経済危機で失業率が大幅にアップした。移民層の失業率はネイティブの2〜3倍にのぼった。一方で、2010年に移民排斥を唱える右翼政党が、国政に進出し20議席を獲得した。                                        



スゥェーデンでは三大都市の近郊の労働者向けの公営団地が移民団地化し、ネイティブとの間に亀裂が生じている。その一部が反社会的行動に向かうと集団化、暴徒化しているようだ。このように拡大し続ける移民問題のひずみにどう対処するのか、スウェーデンの今後の社会動向が注目されているという。


1年ちょっと前にスウェーデン人の講師が移民問題のひずみにどう対処して行くかと心配しながら問題を投げかけていたことが現実となって新聞記事にあるような措置をとらざるをえなくなったのだ。はるか彼方の国の問題も、これだけ身近な存在と感じられるほど地球は狭くなった。