象牙の塔


寒さが緩み春の訪れを実感できるような日となった。先週訪れた岡崎城の城壁に沿って咲く梅も、あの時は寒さに震えていたがきょうあたりは、さぞかし日差しの温もりを感じながら咲いていることだろう。


去年のことだが、ある大学教授の講演を聴いた。演題は「日本経済の現状と今後の課題」。冒頭に先生いわく。「経済学者は起こった経済現象に対してどうしてそうなったかを解析することは得意だが、その先どうなるかなどと言うことは不得意。」これからの経済がどうなるかが知りたい熊さん、八っあん相手に最初から予防線を張る始末。居眠りして何を聴いたかも覚えがない状態だった。                  


学者に予想屋をさせるのがどだい無理なことかもしれない。かつてこんなことがあった。高校の同級生が東京の大学で経済学部の教授をしている。出身地多治見の信用金庫が招いて経済講演会を開いた。自分も聴きに行った。同級生がなんとも面白くない話だと酷評した。その教授次のようなメールで返事してきた。


(前略)講演とかセミナーとか何百回やってきましたが、皆が満足する内容などありえず、また、話を受身で聞いて、自分が儲かるなどといったことは、市場経済ではまったくありえないこと、そこで、「面白い、しかし、信頼できない」金儲けのための評論家の類の話は絶対したくない(中略)、ネガティブ・コメントをする参加者がおられれば、面白おかしい違ったタイプの講演会を選んでもらう以外ありません。


学者先生をワイドショーに出てくる評論家や予想屋と同一視するわれわれが間違っているか、講演を引き受けた以上聴衆に見合った話をする柔軟性を持ち合わせない学者先生の資質の問題なのか? これが「象牙の塔」というものだろう。