八百屋今昔


きのう一日限定の美しい夏空だった。きょうはもう朝からどんよりした雲間から時折薄日が漏れる程度の梅雨を思い起こさせるような天気だ。丘陵地に点在するあちこちの農家の片隅で今タマスダレがずらっと並んで咲いている。ウチの南側の石垣沿いにも咲いている。白く美しい花を「玉」に、細長い葉が集まっているようすを「簾」にたとえてタマスダレとなったのではないだろうか?もし、そうだとすれば、絶妙なネーミングだ。



昭和30年代まで町の八百屋は繁盛していた。子どものころ八百屋は町の放送局で近所の噂話の発信源だった。おふくろがよくボヤイていた。八百屋ではヘタなことはしゃべれんと。町の八百屋はそれほど地域にとってはなくてはならない存在だった。高度成長の波に乗って町の八百屋はスーパーに取って代わられ町から姿を消した。


ところが、いま東京都心で売り場面積が10〜20平米の小さな青果店が人気を集め多店舗展開を始めたという。1週間ほど前の日経電子版に出ていた。人気の秘密は鮮度とおいしさと価格設定だという。経営者は大学で農業を専攻した32歳の青年。今では、大手百貨店からも青果店の出店要請が来ているそうだ。


独自に開拓した産直ルート。時間が経ったものは店内でサラダや漬物に加工。有機野菜にこだわらない。おいしくなければ売れないから。試行錯誤の結果、消費者がこの鮮度と味なら少々高くても買おうと金を出すのはスーパーなどの価格の1.2倍までと踏んだ価格設定。もうひとつこの店の特色は、客と店員との会話が頻繁にある。「一番甘いメロンはどれ?」「このナスのお薦めの食べ方は?」青果店が都心で再び存在感を高める日が来るかもしれない。と締めくくっていた。


クマの目
人の集まる所(東京)には頭の使いようでビジネスチャンスがあるものだ。昔の町の八百屋も今の都心の青果店も客とのコミュニケーションこそ商売の原点だということを物語っている。コストコのような大量購入の店も、この青果店のような店でもビジネスが成り立つ日本は懐の深い市場だ。子どもの頃の近所の八百屋と東京の青果店を重ね合わせてそんなことを思った。