友から学んだこと


終日薄日が漏れる程度で花見日和というよりはむしろ”花冷え”に近い一日だった。桜ばかり仰ぎ見がちのこの季節、路傍や花壇でかがんでみれば、野草や季節の花が春到来を告げている。スミレ、タンポポレンゲソウ、チューリップにヒヤシンス。多彩な春だ。




学生時代の友人Y君が亡くなった。彼は都会的な洗練されたところがあった。半世紀以上も前の彼の言った言葉が未だに忘れられない。ある駅で待ち合わせをして30分近くも彼を待たせてしまった。彼に遅刻を詫びると「気にするなよ。待っている方より、待たせている方がつらいンだから」と待たせた自分に気遣ってくれた。このセリフが彼だからキザにならない。学生時代からジェントルマンだった。




彼女と一緒の時は自分は必ず車道側を歩けとか、デートの時は靴磨きをしろ(当時は学校に靴磨きがあった)とか、最寄りの駅までエスコートしろとか田舎者の自分に紳士のたしなみを教えてくれた。学校でも家庭でも教えてくれない、友達からならではの”常識”を彼から学んだ。