鞘(さや)の収め時

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午前中は明るい日差しもあったが、午後は雲が多くなって鈍い日差し。暑くもなく寒くもない過ごしやすい陽気になった。名古屋の桜もほぼ満開に近いというのに、我が家の膝元四つ池の道路沿いの並木はまだ一分咲きだ。池の堤の高い所の並木は三分から四分咲きだ。池の岸辺では三分咲き。芽吹いた柳の緑色とのコントラストが美しい。



豊田の会社にいたときのOB会が3年前に解散した。長年いた社長を囲む会的な会で、10年ほど前にその社長が亡くなったので、それを機に解散するのがいいと思いつつ5年6年と経ってしまった。大阪赴任中は出席していなかったが、リタイヤー後はほとんど毎年出ていた。


事務局も解散を云い出せず困惑していたので、自分が提案するから主だったメンバーに根回ししておくように言っておいて、なんとか解散するすることができた。この種の会は始める時は、飲むことが好きな者ばかりが集まることだから簡単に話がまとまるものだ。やめるときが難しいものだ。なかなか言い出しにくい。


かつて誰かの講演会でこんな話を聞いたことがある。真剣を使ってやる居合の稽古は、「刀を抜く時より鞘(さや)に収める時の方が難しい。心に揺るぎがあると自らの左手を切ってしまうから」と。これを前述のOB会にあてはめることは居合に失礼かもしれないが、議論だとか駆け引きなどにも通じることだと思う。



昨夜一時帰国していた駐韓大使が3ヶ月ぶりに帰任した。昨年末に日韓で慰安婦問題について「不可逆的」などという時の話題を集めた言葉をまじえ、10億円もの基金を韓国に出す取決めを行った。にもかかかわらず、韓国は動かない。業を煮やした日本が大使を引きあげさせた。


刀をいとも簡単に抜いたものの、何の進展もないのに抜いた刀を鞘におさめるのには苦渋の決断があったことが察しられる。だがなにしろかの国では、大統領が容疑者となり、世論は紛糾し、社会全体が揺れに揺れている。さらに5月の大統領選挙に向けては、対日強硬姿勢が目立つ候補者がリードの様相だ。                 



加えて、けさ北朝鮮が中距離弾道ミサイル日本海に向けて発射させている。核実験は秒読みの段階とさえいわれている。日本が大使の帰国という刀を振りかざしていることさえ、もはやだれも気にとめていないのかもしれない。こんな状況の中で意地を張って大使をいつまでも帰国させておくことはいかがなものか?


結果的には日本の不満の意思表示だけに終わり、オウンゴールに値する大使の一時帰国だったと思うが、短期的な結果だけに目を向けないで、現実の国際政治は長い目で見なければならない。ということから、日本の意思表示に対して何の進展もなしでの帰任も止むを得ないのではないかと思う。刀は簡単に抜いても鞘(さや)に収める時の方が難しい。よくわかった。