カキツバタ


風薫る、気持ち良い五月晴れ(ごがつばれ)になった。この使い方自信がなかったので調べた。五月晴れ(さつきばれ)となると、梅雨時の晴れ間らしい。両眼の垂れ下がった瞼(まぶた)を上に引っ張り上げる手術をしたら眼が大きくなった。下りていたシャッターを上げたから室内が明るくなったのと同様、目に入る景色すべてが明るくなった。実に明るい五月晴れだ。 


カキツバタがきょう5月11日の誕生日の花だとラジオ深夜便が伝える。このカキツバタ、愛知県の県花であり、古典的園芸植物であるだけに、色々と思い出が蘇り、名前を聞くだけで懐かしさひとしおの感がある。最初の出会いは高校の古文の時間だっただろう。「伊勢物語」で在原業平(ありわらのなりひら)が現在の知立・八橋の無量寿寺で詠んだカキツバタの歌だ。


○からころも ○きつつなれにし ○つましあれば ○はるばるきぬる ○たびをしぞおもふ

(何度も着て身になじんだ)唐衣のように、(長年なれ親しんだ)妻が(都に)いるので、(その妻を残したまま)はるばる来てしまった旅(のわびしさ)を、しみじみと思う。歌の五・七・五・七・七 の 区切り、〇印を追って行くとかきつばたになる。



名うてのプレイボーイ、スキャンダル男の在原業平が都に居辛くなって東国へ旅に出た。三河の国の八橋で弁当を広げて休んでいる時にふと目にしたカキツバタを折りこんで詠んだ歌なのだ。1300年もの歴史があるこの無量寿寺には何度も訪れたことがある。庭園には16の池があり、約3万本のカキツバタが植えられている。花札の5月の「杜若に八ツ橋」はここがモデルだそうだ。(写真右下 ネットより)


このカキツバタ、土壌汚染による生育不良で去年はかきつばた祭りが中止になったそうだが、地元の人達の尽力で今年は祭りが出来るようになったと先日新聞に出ていた。




刈谷市北部愛知教育大学の近くにある小堤西池は国指定天然記念物のカキツバタ群落。30年も前は「知る人ぞ知る」的存在だったが、地元の人達が熱心に保存活動をして最近は、この時期になると見学者が多い。無量寿寺が一本ごとにカキツバタを眺めるのなら、こちら小堤西池は原生林を遠くから眺めるといった趣だ。(冒頭の写真)



右上のカキツバタは我が家のすぐ下、四つ池小公園の木道の脇で咲いてるものだ。小公園の池は水が干上がっているため生気がない。カキツバタを漢字で書くと「杜若」。会社の系列学校法人で杜若(とじゃく)高校が豊田市にある。40数年前、優秀な人材を育てる理想のもと英国のイートン校を見習った全寮制の男子校が設立された。


校章はカキツバタの花を図案化したものだ。理想は高くても現実は厳しい。一昨年からは共学制になった。リオ五輪カヌーカナディアンシングル銅メダリスト羽根田選手は卒業生だ。


カキツバタはアヤメ科アヤメ属。ウォーキング中、畑の片隅に咲くアヤメを見て、メンバーからこれアヤメ?カキツバタ?と聞かれる。その際、こう教える。花弁の元を見れば一発でわかる。アヤメは網目模様、カキツバタは一本の筋。咲く場所でもわかる。アヤメは土、カキツバタは湿地。咲く時期でもわかる。アヤメは5月上旬、カキツバタは中旬。