搭乗拒否、許されなかった一言

きのうまでの秋晴れとは違い、やや雲の多い秋の一日。「この秋一番の冷え込み」が日ごとに更新されている感じだ。



きのうの日経電子版に「搭乗拒否、許されなかった一言」と題して、裁判担当記者が新聞記事にはならなかったものの、その当事者たちの人生や複雑な現代社会の断片が浮かび上がってくる物語を伝えていた。その要約は次の通り。


成田発「ミャンマー5日間の旅」に1人でツアー申込をした70代の男性。出発日のチェックインカウンターは仕事に不慣れな女性で手続きに手間取った。男性は「私がテロリストなのでそれほど時間をかけているのですか」「私は指名手配されているから十分にチェックしなさい」と続けた。



別の社員が駆け付けて搭乗券はすぐに発券されたが、警察官が何人もやってきて機内持込み用のバッグの検査が行われた。勿論、危険物はなし。そして、「テロリスト」という言葉を使った。今後一切使わない旨の自認書を書かされた。


さらに航空会社宛に、今後一切、不適切な発言はしない。安全運航の妨げとなる行為は行わない。反省が見られない場合に搭乗を断られても文句を云わない旨の誓約書を書かされた。署名の際には散々悪態をついて渋々それに応じた。



ところが、一部始終の報告を受けた機長はその男の搭乗を認めなかった。「反省の様子が見られず他の旅客を不安にさせる様子が見られる」というのが理由だった。搭乗拒否を告げられ,男は素直に受け入れた。


その後、男は旅行会社に対して、ツアーの代金返還を求める訴訟を起こした。「実際にテロリストが自分でそう云うはずはなく、誰でも冗談だと想像できる」と主張。旅行会社側は「ツアーに参加できなかったのは男のせいで返還の必要はないが航空会社から返ってきた10万円を返金するなど誠実に対応している」と反論。



結局、男の言い分は通らなかった。地裁の判決は「2001年の同時多発テロ以降、世界中でテロ対策に力を入れていることは広く知られている。ひとたびテロをにおわす言動があったなら、安全確保に向けた点検が組織的に行われることになる。たとえ冗談でも真意を確認するのは困難で、最終的には機長が判断しるしかない」とした。


その上で、「反省の態度を示したとは認められず、自らの発言の影響を理解する様子もなかった」と男を批判し、「搭乗拒否には理由がある。ツアーに参加できなかったのは男の責任だ」と訴えを退けた。判決はそのまま確定。




クマの目
エエ年したおっさんが、長年の人生経験で冗談云うにもT(時)P(場所)O(場合)を考えろよ。記事によれば、この男は総合商社に長く勤め、国際事情に通じていたと云う。ならばこそ、経歴や経験からくる慣れが緊張感を鈍らせ、軽はずみなブラックジョーク騒動を引き起こしたというのだろうか。それにしても、TPOだ。