働かない働きアリ


まさに春本番の陽気だ。あす5日は冬ごもりしていた虫がはい出るころという二十四節気の「啓蟄(けいちつ)」。三好丘陵地の荒れ地の土手のヒメオドリコソウ群生地も賑やかになってきた。草花が元気になれば「啓蟄」を待ちかねたように虫が姿を見せてくる。ヒメオドリコソウテントウムシがしがみついて微動だにしない。きっと、啓蟄で表に這い出してきたものの、一日早すぎたとどぎまぎしているのでは?(写真の日付を1日フライングした)


あざぶの丘公園でも春を告げる花がちらほらだ。池の土手でネコヤナギのあのビロードのような花穂は膨らんできた。樹皮が和紙の原料となるミツマタが黄色くなりはじめた。



「働かない働きアリ」とは、ちょっと矛盾した形容だが、アリの集団には常にそういう個体が2.3割存在するらしい。なぜか、彼等はむしろ集団には欠かせない存在らしい。北海道大のグループが英科学誌に論文を発表したと10日ほど前の新聞各紙に載っていた。


勤勉なアリだけの集団と怠け者の交じった集団をコンピューターを使った実験で調べると、後者の方が長く生き延びたと云う内容だ。皆が一斉に働く集団は、一斉に疲れて結局誰も動けなくなり、集団は壊滅する。一方、ふだんサボっているアリは、仲間が疲れて休むと代わりに働いて集団は永続する。短期的には無用とみえる個体が、長期的には実に有用なのだ。




ギリシャ金融危機の時、我々はギリシャ人をイソップ童話の「アリとキリギリス」のキリギリスに例えたものだ。ギリシャ人のように将来の危機への備えを怠ると、その将来が訪れた時に非常に困ることになるので、アリのように将来の危機の事を常に考え、行動し、準備をしておくのが良いというもだ。


はるか遠いギリシャのことで、国自体の現状はよくわからない。しかし、あれだけギリシャ危機が叫ばれEU脱退寸前まで行きながら、テレビに映し出されるギリシャ人はそれほど危機感もなく生活を楽しんでいるように見える。彼等は、案外キリギリスでなくEUというアリの集団の中の怠け者グループの役回りで存在感を発揮しているかもしれない。


ギリシャ古代文明からの伝統、ロシア南下政策の防波堤となる地政学的に要衝の地としてEUも簡単に放り出すことはないと足下をみているのではないだろうか。現状はEUのお荷物だが、長期的には有用なギリシャではないだろうか。我々にキリギリスのギリシャから、アリ集団の怠け者グループのギリシャに認識を変えさせてくれたアリ集団の研究発表だ。