美術館での撮影OK、NG

モンスター寒波が去った。風も穏やかで日差しに温もりが感じらる。この寒波、ときには秒速100m以上にもなるといわれ、戦時中米本土への風船爆弾として活用された上空1万mを蛇行しながら地球を巡るジェット気流だ。こいつがシベリヤの方から運んでやってきたのだ。

  
パリ ルーブル美術館 ’10.04.29
昨年末のこと。どのチャンネルだったかどんなタイトルかも覚えていない、チラッと見ただけだけれども印象に残っているテレビの番組がある。全国各地の美術館の学芸員数人のトーク番組だった。展覧会の写真撮影OKか否かの話題で話が弾んでいた。


大勢はOKのようだった。 理由のひとつは「展覧会のPRは、客が写真を拡散するのが一番効果的」。SNSを通じて写真を見てもらうことで、“あの人が行ったなら”と、次なる客を呼び込むことが出来ること。もう一つの理由が「外国人観光客対策」。諸外国では美術館博物館は撮影OKの所も多く、本国と同じように、日本の文化も楽しんでもらおうとすることから。



そう、云われてみれば、パリのルーブル美術館オルセー美術館アムステルダムの国立ミュージアムも撮影OKだった。アムステルダムゴッホ美術館はNGだった。そう考えてみると、昨年豊田市美術館で開かれたデトロイト美術館展は、平日撮影OKで画期的なことだった。


豊田側にしてみれば大事なものを預かったから、もしものことがあっては・・・と撮影NGにしたいところだが、デトロイト側の意向が反映されたのだろう。こんなところから、なぜ日本の美術館では撮影NGで諸外国ではOKかという歴史的背景が見えてくるような気がする。



おそらく諸外国の公的な美術館では、展示物は公共財産との認識があり、公共の利益に反しない限り、個人の自由に任されてのだと思う。日本の美術館では、その美術展の主催者または展示物の所有者が、「所有者の個人的権利」を主張して「見せてやっているから大事に見ろよ。撮影はダメだ」というケースやデトロイト美術展のように海外や個人蔵の美術品を借りてくる場合が多いので、美術展主催者が責任回避のために撮影NGにしているケースも多いのではないかと思われる。


撮影OKの習慣がまだ定着してない日本では昨年のデトロイト美術館展では、ゴッホゴーギャンの自画像の前で、アホみたいな顔をして自撮りする連中をよく見かけた。中国人のマナー違反を云々する資格なしの連中だ。学芸員の皆さんも世界レベルの美術館環境と観覧者のマナー向上含めて撮影NG解禁を望んでいるかもしれない。