20秒早発電車 謝罪必要?


日差しはあるが、北西の季節風の強い典型的な冬の天気だ。ウォーキングで肌を刺す風は白川郷を散策している時よりうんと身体に寒さがこたえる感じだ。寒風の中にピラカンサがたわわに真っ赤な実をつけていた。同行者からこの実はけっこう美味しいよとの発言。


緑化センターの「季節の花めぐり」でいつぞやこんな話を先生から聞いた。木の実は種子散布のため鳥に飲み込まれなければならない。しかし、一度に多量に食べられ一個所に排泄されると散布範囲が限定されるし生育にも不利になる。そこで、ピラカンサは食べて欲しいが、少しづつにしてもらうために、美味しそうな外見と不味い中身になった。と。


ネットで調べた。実際に食べてみた人のレポートもあった。2月頃に食べるとけっこういけるそうだ。「蓼(たで)喰う虫も好き好き」とのことわざのように、「ピラカンサ喰う人も鳥も好き好き」のようだ。ラジオ深夜便11月23日の誕生日の花はピラカンサだった。バラ科 5月に開花、白い花。秋の実の方が目立つ。



今週は二つの小さな新聞記事でその関連性について考えさせられた。一つは、東京・秋葉原と茨城・つくばを結ぶつくばエクスプレス(TX)を運行する会社が電車を定刻より20秒早く出発させたとして謝罪した。この件に関し、海外からも反響があったようだ。このTXに3年前秋葉原からつくばまで乗った。都心から茨城まで45分。便利だ。


もう一つの記事は、流通や小売りで働く労働者の組合が、悪質なクレームをめぐる5万人のアンケート結果を発表した。その内容は、聞くに堪えぬ暴言や、長時間にわたる説教が多かった。「迷惑行為は最近増えているか」との問いに5割がそう思うと答えている。対応となると、「謝り続けた」「何もできず」があわせて4割を超えている。そんな記事だ。



テレビのニュースで組織のお歴々が並んで一斉に頭を下げるシーンを少なくとも1ヶ月に1回や2回は見る。海外メディアも指摘するように、日本では円滑に物事を進めるために、とりあえず謝ることが習慣となっている。酒席で「とりあえずビール」くらいの感覚で、とりあえず頭をさげておくのが日本流のものごとの進め方ではなかろうか。


とりあえず・・・のうちは、それでうまくコトが運んでも「おもてなしの国、世界一心のこもったサービス」ともなってくると、簡単にコトは運ばないのだ。21日付の朝日新聞天声人語が作家石田衣良さんの言葉を引き合いに出して語っている。


いわく。客としては王様のように振る舞うが、サービスや商品を提供する側に回ると、下僕のようにさせられる。日本社会を大きな目で見れば、消費者である自分が労働者である自分を追いつめていないか。と。20秒早く出発して謝るなんて、やっぱりおかしい。我々は、普段から要求が行きすぎてないか、考え直す必要があるのではないかと思う