Theおこしもん


朝は氷点下でも、日中窓を開けたまま田園地帯に車を走らせて行くと心地よい春風が頬に伝わってくる。三寒四温から二寒五温、一寒六温へと移行中だろう。


今週の月曜19日、二十四節気の「雨水」だった。朝のラジオで名古屋出身の女性アナウンサーが語っていた。子供の頃、家では「雨水」の日にお雛様を飾り、3月の初めの「啓蟄」の日に片付けていた。そして、母親が「おこしもん」を作ってくれて食べていた。あまりお菓子もない時代で、子供心に雛祭りは楽しみだった。と。


たまたま、けさのラジオ番組で関東地方出身の女性アナウンサーが、月曜日のその放送を聞いて、「おこしもん」なるものの存在を初めて知った。先日、岡崎の手土産といっていただいた「伊賀まんじゅう」もやはり雛祭りのお菓子だった。まんじゅうの上にのせた米粒が、栗のイガのように見えるからということらしい。



昔から西三河地方では、ひな祭りが近づくと家庭で「伊賀まんじゅう」を作り始め、それが春の訪れを感じさせたというが、今では家庭で作ることはなく、和菓子屋さんで買い求めているという。「伊賀まんじゅう」のように、商業ベースに乗って受け継がれているものやら、地元の人から人へと受け継がれている「おこしもん」。いろいろな伝わり方があるものだと改めて認識。


その「おこしもん」、20数年前にみよしに来て初めて知った。クマさんの日記にもアップしたことがあった。そのときの写真があったので、改めて「Theおこしもん」。



そもそも、この「おこしもん」とはなんぞや?西三河尾張地方で、桃の節句に供える和菓子だ。よそ者ばかりのこの三好丘では珍しさも手伝って、10年以上前からコンニャクづくり、味噌づくりとともにおこしもんづくりも開拓時代からこの地に住むリーダーの御婦人のもとで10人ほどの奥さん連で続けられている。



どうやって作るか?熱湯でこねた米粉を鯛や扇などの木型に入れて成型し、蒸し器で蒸しあげた後に食紅で着色する。または、色生地を別に作っておき、成型時に白生地と一緒に詰め込む調理法もある。後者の方が多いようだ。         



蒸したてのものや餅のように焼いたものを、砂糖醤油などをつけて食べる。ネーミングは木型から起こすからなどといわれているそうだ。内祝いや引き出物として鯛をかたどった”らくがん”や”かまぼこ”で作られた縁起物は昔からよく見かけたが、この「おこしもん」もそれらに通じるところがあるのではないかと思う。
                       

いずれにせよ、棒の手が県の無形文化財として保護されながら伝承されているのとは異なり、一個人・一女性が地域に伝わる伝統文化を気負うことなく、さらりとした態度で普及・伝承されていることに感服する。