歴史に残る小平の金メダル


春の到来が実感できるような日が二日も続いている。ウォーキングの道すがらに立ち寄る先には、玄関先にお雛様が目につくようになった。別に大きければいいというものでもない。暮らしのアクセントとしての玄関先のお雛様もいいものだ。 舟ヶ峪公園の梅林の紅梅もやっとチラホラ咲きとなった。わが家のクリスマスローズも、この時季になってようやく咲き始めた。クリスマスローズならぬピーチフェスタローズと云ったところか。



テニスのウィンブルドン選手権、戦前のことだ。日本からの代表選手清水善造は決勝で米国のチルデン選手と戦った。チルデンが足を滑らせて転倒、そのとき清水はゆっくりとしたボールを返した。チルデンは態勢を立て直し、返球がエースに。観客は総立ちで清水に拍手を送った。結果としてチルデンが勝った。



このスポーツ美談、小学校の国語の教科書で知った。60数年経った今でも憶えている。平昌五輪も明後日で閉幕だ。日本も、特に女子のスピードスケート陣の活躍が目覚ましくメダルラッシュに沸いた。小平選手の500mの金メダル獲得の名場面は歴史に残り、後世教科書にも残るようなシーンではなかったかと思う。



韓国のイ・サンファはソチ大会に続く500m五輪3連覇に挑んだものの小平に敗れた。イ選手が韓国国旗を手に泣き崩れた際、小平は自ら歩み寄り抱擁した。号泣しながらも国民に謝罪の意を示すイに小平は声を掛けながら、優しく背中に手をまわして彼女を包み込んだ。実に感動的だった。安倍総理も電話で祝福したほどだった。


戦いが終われば勝者も敗者もいがみ合わず、健闘を称え合う。底に憎しみなど当然ない。これこそがスポーツの原点だ。これまでも、五輪では人々の心を胸打つ名場面が多くあったと思うが、何かと因縁深く摩擦が消えなかった日韓両国の間に「真の友好」を印象づけたシーンではなかっただろうか。



小平は、日韓関係にいい意味でくさびを打ち込んだ。スポーツマンシップにのっとった彼女の純粋な行動に両国の国民が胸を打たれ、気付かされたに違いない。いがみ合ってばかりいるのが、何て愚かなことなんだと。そして友情とは何て素晴らしいものなんだろうと。                                      


いま一度、我々に日韓の関係性を考え直す機会を与えてくれた小平の素晴らしき行動も競技に加えて金メダルに匹敵するものだったといえる。きっと、後世の教科書にも残る金メダルだ。