刑務所で熱中症に思う


西日本豪雨に始まり、異常高温、異常ルートをたどる台風12号。今までの経験則では推し量ることが出来ないような気象の状態が続く7月だが、この台風で締めくくりとしてもらいたいものだ。南太平洋からスライスラインで北上して日本に上陸するのが台風の経験則だが、この12号はなんとフックラインを描いて伊勢湾から上陸、瀬戸内海を西進だ。


こんな天気のせいだろうか、金曜の夜の恒例の花金居酒屋もいつもの月より参加者が少なかった。土曜の昼間の名古屋での、かつての所属部署のOB会も県外からの参加者が何人もドタキャンだ。朝、目覚めてみれば、台風が消えてしまったのごとき日常と変わらない風景。幸いにもこの地は台風に肩透かしを食わされた。畑の作物も無事だ。トマトに赤ピーマンと赤い収穫ができた。



10年以上前の日経新聞の連載小説、渡辺淳一愛の流刑地」。主人公菊治が人妻冬香と密会を重ね、その最中に「首を絞めて殺して」といわれ、思わず彼女を殺してしまった。そして、獄中の人となった。獄中の夏の暑さには閉口していた。これはフィクションだが、ノンフィクションでその暑さに参っていたのが、ホリエモンだ。TVのインタビューで語っていた。


先週の24日、わが家から歩いて10分もかからない名古屋刑務所の4階の居室で受刑者がおう吐した状態で倒れているのが見つかり、病院へ搬送され死亡が確認された。熱中症が原因のようだ。6年前、この刑務所を見学した際、受刑者が作業している時間に彼等の居室も見たことがある。鉄筋コンクリート4階建ての最上階ともなれば夏の暑さは想像できる。



メディアによっては「刑務所による殺人」とか「居室に冷房なし」の見出しのものがあるのには恐れ入った。「刑務所による・・・」などは論外だ。「居室に・・・」は、受刑者の居室に冷房設備がないのがいけないのだ。と云わんばかりに受け止められる。果たして、刑務所に冷房設備をするのは適切なことだろうか?


被害者の感情に重きを置く国民性からいえば、罪を犯した者はそれなりの苦痛を味わって当然。とはいえ、命を落としてはいけない。そのための措置を講ずることはしなければならない。たとえば、4階の使用をやめるとか、給水タイムをもうけるとか・・・。



刑務所の冷房装置の適否の問題も事柄としての大小はあるが死刑制度のそれと同じ根にある問題だと思う。先週の26日にオウム死刑囚13人の内残りの6人の死刑が執行された。進歩的な考えを標榜するメディアは1ヶ月の間に13人もの死刑を行う日本。これを機に死刑制度の是非を国民で論議すべきでないかとアピールしている。


世界約200ヶ国で死刑制度を廃止している国と制度はあるが執行はしていない国はEU諸国をはじめとして百数十ヶ国。死刑制度があり執行している国がイスラム諸国、中国、北朝鮮、米国(州によって異なる)日本など数十ヶ国らしい。


廃止の理由は、罪人でも命ある者の人権を無視できない。冤罪がある。そんなことから国家権力で人を殺すことはできない。制度があり執行している国では、イスラム教のような宗教からくる国民感情、日本のような被害者の感情に重きを置く国民感情。刑務所の受刑者の居室に冷房を設置することさえ、国民的論議を呼ぶことだろう。ましてや、死刑制度ともなれば、一朝一夕に決められない問題だと思う。