岡崎滝山寺で感じたこと

氷点下の朝ではあったが、乾燥した晴天でおまけに風も穏やかで、昼間は日差しにぬくもりが感じられた。そんな好天に恵まれた日の午後、生涯学習講座「歴史散歩」は岡崎の滝山寺を訪ねた。岡崎の中心市街地から北北東におよそ8kmの山間の地だ。毎年旧正月頃に行われる天下の奇祭鬼祭りで有名なこの寺だが、訪ねてみて由緒ある寺だと再認識した。


● 三門
室町時代前期の建立。入母屋造楼門、国指定重要文化財岡崎市内最古の建造物。仁王像は運慶の作。1300年前の本堂創建当時から隆盛時には境内に350もの寺院が建てられたと云われる。この三門から本堂まで800mもあるが、それもうなずける。その800mの間も今は住宅がびっしり建っている。


● 本堂
三門の大きさに比べ、本堂は貧弱に見える。室町時代前期の建立。寄棟造り檜皮葺き。国指定重要文化財。寺そのものの歴史は、およそ1300年前に創建され鎌倉時代には源頼朝の従兄弟が住職になって隆盛を極めている。室町時代以降衰退の道をたどったが、江戸時代に将軍家光によって寺領となり、東照宮も造営された。



● 聖観音梵天帝釈天三尊像
本堂下の宝物館にある。鎌倉時代の有名な仏師、運慶、湛慶父子の作。国指定重要文化財源頼朝の従兄弟にあたる住職が頼朝追善のために運慶・湛慶に彫らせたもの。中央の聖観音像は頼朝の等身大。仏身に遺髪と歯が納められている。戦後、透視写真を撮ってわかった。


● 滝山東照宮
久能山・日光と並ぶ日本三大東照宮のひとつ。滝山寺本堂の東に隣接。滝山東照宮本殿、幣殿、拝殿、透塀、鳥居、水屋などが国指定重要文化財になっている。徳川家光徳川家康が生まれた岡崎城の近くにも東照宮を造営するには家康もよく訪れていた滝山寺が適地ということで正保3年(1646年)に創建した。



案内してくれた住職さんがわずかな数の檀家で大変苦しいので観光客にもっと来てほしいと訴えておられた。その割には国指定の重要文化財がこれだけありながら観光客が少ないのはPRが足りないのではないだろうか。隣接する市に自分は住みながら初めておとずれた。


宝物館にある三尊像は重要文化財ながら、見学者がいくらでも仏像に手を触れることができる状態で展示されている。見学者が近づくのをガードする柵とかロープなど何もない。陳列ケースに入っているわけでもない。帰り際に本堂の板縁の下に点火用ライター、チャッカマンが落ちていた。見つけた人が点火したら火がついた。このふたつのことに出くわして、何だか住職さんが嘆いていたことの解決策を垣間見た気がする。